Yの悲劇を読み返してみて

かなり紹介したい本が、エラリー・クィーン著『Yの悲劇』です。推理小説好きの人であればもう知らない人はいない、ってくらいの有名作ですよね。でも、最近のミステリーを読んでいると、トリックがあまりにもデジタル化、かつ複雑化してしまってきているので、こういう古典に目を通して見るとかえって斬新に感じたりもします。

舞台は、家族それぞれが強烈な個性をもった、もっといえば変人ばかりのハッター家。家の中心的存在であるエミリー・ハッタ―の夫であるヨーク・ハッタ―の自殺事件のあとで、未遂事件も含めた殺人事件が繰り返し起こります。メインになる謎解きはフーダニット、つまり犯人はだれか、です。

まだ読んでいない方のために、ネタバレはいたしませんが、いま読み返してみても、その意外性は格段のものです。今という時代になってみると、哀しいかな、あまり意外な側面は薄れてしまいますが、当時の人々の驚きはどのようなものであったのかは容易に推測できます。

また、伏線の張り方がさすがはクィーンだな、と唸らされます。さりげなく謎解きのヒントが与えられていることには脱帽します。

そして、この作品はこれ1作だけではなく、『Xの悲劇』『Zの悲劇』『ドルリー・レーン最後の事件』と、探偵レーンが活躍する4作通して読んでみることをお勧めします。そうすると、最初からクィーンが4部作構想を練っていたのだろうな、ということがわかります。後味の悪さが付随してきますが。